糖尿病の予防にこれ!効果的な「2種類」の運動方法
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糖尿病の基本的な理解から運動療法の種類、注意事項などを中心に、リハビリテーション専門職種の一つである作業療法士の筆者が説明していきます。
目次
血糖値のコントロール
ブドウ糖と血糖
私たちは口から食べた物を体内で分解して栄養として吸収します。代表的な栄養源として「炭水化物」が挙げられますが、「炭水化物」は体内にて分解されて「ブドウ糖」となります。
「ブドウ糖」は血液を介して全身に運ばれ、細胞が活動するためのエネルギーとして利用されます。特に脳は「ブドウ糖」のみをエネルギー源としているなど、生きていくうえでは欠かせない栄養源となっています。
血液中に存在する「ブドウ糖」を「血糖」といい、血液中の「ブドウ糖」の割合(量)を「血糖値」といいます。
血糖値の調節機能とインスリン
「血糖値」は食事などエネルギーを摂取すると上昇します。逆に運動などを行うと「血糖値」は低下します。
しかし、急激な「血糖値」の変動は身体に大きな負担を強いることになります。そこで、膵臓にて作られた「インスリン」というホルモンが重要な役割を果たします。
「インスリン」とは食事などにより作り過ぎた「ブドウ糖」を肝臓や筋肉などの細胞に貯蔵する役割を担います。これにより、食事などによる急激な「血糖値」の上昇を防ぐことができます。
逆に運動などにより、血液中の「ブドウ糖」が不足した場合は、「その他のホルモン」が働いて、肝臓や筋肉に貯蔵していた「ブドウ糖」を血液中に再放出することで急激な「血糖値」の低下(低血糖)を防ぐことができます。
健康な身体では「インスリン」と「その他のホルモン」が絶妙なバランスで働くことで「血糖値」を一定に保つことができています。
糖尿病とは
糖尿病とは、何等かの原因にて「インスリン」の働きが不十分となりブドウ糖の有効活用が出来なくなった結果、「血糖値」が高くなった状態(高血糖)を指します。また「高血糖」状態を放置すると、身体に様々な症状が発生するリスクが高まることになります。
糖尿病の「種類」
1型糖尿病
「インスリン」を作る膵臓の細胞が何等かの原因で破壊されることで、「インスリン」そのものが分泌されなくなった状態を指します。子供や若年者が発症するケースが多くなっています。
原因は様々な要因が複雑に絡んでおり、はっきりとしたことは分かっていません。
2型糖尿病
「インスリン」の効果が出にくくなったり、適切なタイミングで「インスリン」が作られない(遅れる)などの状態を指します。主に中高年以降に発症することが多いですが、最近は若年者の割合も増えてきています。
原因は遺伝的な体質(日本人は遺伝的にインスリンの分泌が弱いケースが多い)に加えて運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が加わって発症します。
全糖尿病患者さんの約9割が2型糖尿病と言われており、一般的に糖尿病を指すときはこの2型糖尿病の場合が多いと思われます。
妊婦糖尿病・その他
妊娠中のホルモンバランスの変化により、「インスリン」の働きが不十分になる状態を指します。「高血糖」は胎児に重篤な影響を及ぼす可能性があるため、医師による適切な対応が必要となります。
糖尿病の3大合併症(細小血管障害)
「高血糖」とは血液中に「ブドウ糖」が必要以上に存在している状態を指します。濃い砂糖水を想像していただければ分かりますが、「高血糖」状態の血液はドロドロとした流れにくい状態になっています。
結果、毛細血管など細い血管などでは、特に血液の流れが悪くなり、血管そのもののダメージ(動脈硬化⇒血管がもろくなる)や周辺の組織がダメージを受けることになります。
網膜症
眼球内の網膜(視力に最も関与する器官)の血管が障害されることで徐々に視力低下が進行し、最終的には失明に至ることもあります。中途失明の原因疾患の1位が糖尿病性網膜症と言われています。
腎症
腎臓(糸球体)の機能は体内の老廃物をろ過して尿として排出する役割を担っていますが、糸球体(毛細血管のかたまり)の血管が障害されることで、老廃物のろ過が不十分となります。結果、高血圧、尿毒症、腎不全などの重篤な症状に進行します。
自覚症状に乏しく、非常に長い期間を通して徐々に進行していきます(慢性腎臓病)。ただし、後半は急速に症状が進行し最終的には血液透析による治療が必要な状態となります。日本での透析導入原因の1位が糖尿病性腎症といわれています。
神経障害
神経障害は、上記合併症と比較すると一番最初に症状が現れることが多い合併症となります。症状が長引くと「うつ」など心理的な症状も併発する可能性があります。
「多発神経障害」⇒症状としては、足のしびれ、足の感覚鈍麻(厚い靴下を履いている感じ)、痛み、こむらがえりなどが挙げられます。
特に感覚障害が進行すると足の小さな傷などは痛みを感じず目にも届きにくいため、壊疽から切断が必要になるなど重篤な症状に進行する場合もあります。
「自律神経障害」⇒症状としては下痢、便秘、神経因性膀胱(排尿のコントロール障害)、起立性低血圧、頻脈などが挙げられます。
「単一神経障害」⇒細い血管が詰まることで、血管が養っていた神経が障害されます。症状としては、顔面神経麻痺や四肢の神経障害などが挙げられます。
大血管障害
心臓や脳にある太い血管が動脈硬化になることで、心筋梗塞や脳梗塞などの生命に関わる重篤な症状を呈する障害です。
心筋梗塞や脳梗塞などは様々な要因で発症すると言われていますが、海外の研究では糖尿病の既往がある方はそうでない方に比べて、心筋梗塞や脳梗塞を発症する年齢が約15年も早くなると報告されています。